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第1話 油圧って何?

 油圧って何でしょう?読んで字の如し。油の圧です。以上、終わり・・・・・・

っていうわけにいかないのでちゃんと説明しましょう。

 まず、油という概念にとらわれないで、流体という考え方で進めていきたいと思います。流体とは何かと申しますと、身近なところでは空気に代表される「気体」と水や油に代表される「液体」があります。広義には「粉体」なんかも流体の仲間に入れたりします。さて、油圧機器の場合前出の液体を利用した機械装置です。ではどうやって動いているのか。それは「パスカルの原理」です。

 パスカルというと「人間は考える葦である」であると言う格言やコンピュータのプログラミング言語を想像される方も多いでしょう。最近では天気予報の気圧の単位(hPa=ヘクトパスカル)でもおなじみです。中学、高校時代の理科の授業を悪夢のごとく思い出す方もいらっしゃるでしょう。

 パスカル(Pascal Blate 1623-1662)はフランスの物理学者で,数学者,宗教思想家でありました。

  物理学の世界での主な功績は、大気の圧力の標高による変化の発見、および静水力学におけるパスカルの原理の定式化でした。また,歯車を使った計算機の発明者でもありました。

「流体の一部に加えられた圧力はすべての方向に等しく伝わり,流体内に想定された任意の面につねに垂直に働く」

このパスカルの原理を応用しているのが油圧機器です。

 今ここに円状の容器に水を満たし、密封できるふたを入れたとしましょう(図1)。ふたの上から荷重Wをかけるとどうなるでしょうか。その力は液体へ伝わり圧力という形になります。たとえばこの容器の直径が10cm、荷重Wを100kgとしましょう。液体にかかる圧力はどのくらいかというと容器の円の面積が78.5cm2、ふたを押している力が100sだから1cm2あたりの圧力Pは

P=100s÷78.5cm2=1.27s/cm2


となります。この力が容器中の水にかかっているわけです。そしてその水の圧力は容器の内壁、フタの内側、ありとあらゆる方向に等しく作用しているわけです。

 ところで、今、s/Cm2と言う単位を使いましたが、現在は国際単位のPa(パスカル)を使っています。

1sf=9.8N(ニュートン)
1Pa=1N/m2 (ニュートン・パー・スクエアメートル)
10s/cm2=0.98MPa(メガパスカル)

 でもパスカルだとちょっと感じがつかめないかと思いますし、未だよく馴染んでいない諸兄も多いと思いますので、重力(工学)単位s/cm2で話を進めます。

 では次に図2のような直径の異なる円状の容器を2つ用意いたしましょう。そして、両方の容器に ホースをつなぎ容器1、容器2の両方の水が自由に行き来できるようにします。1の容器は直径が10cm、2の容器は直径が3.5cmとします。この二つの容器がちょうど釣り合うように、つまり動かないように荷重をかけるにはどうしたらよいかを考えてみます。1の容器の面積は

10×10×3.14÷4=78.5cm2 *注1

2の容器は3.5×3.5×3.14÷4=9.6cm2

1の容器は2の容器よりも約8.2倍の面積を有しています。

 ハイ、この面積の比率が結構重要だったりします。仮に2の容器に20sの荷重をかけてみましょう。すると容器の面積は9.6cm2だから圧力P=20s÷9.6cm2=約2.1s/cm2。この圧力が容器内、ホース内に等しく作用しているのです。と言うことは容器1のふたにかかる圧力も同じですね。ではこのふたはどれくらいの力がかかっているのか前出と逆の計算でそれは出ます。つまり容器1の受ける加重

W1=2.1s/cm2×78.5cm2=164.89s≒165kg

何と100s以上の力があるわけです。容器1に165sのおもりと容器2に20sのおもりを乗せて容器のふたは釣り合います。

 容器2に小さな力を加えて容器1に大きな力が出るのは分かりますね。油圧機器は容器2がポンプ、容器1がシリンダ(アクチュエータ)にたとえられます。油圧は小さな力から大きな力を生み出すことが出来ます。容器1の面積をもっともっと大きくすれはもっともっと大きな力を発生させることが出来、もっともっと大きい仕事をさせることが出来ます。

 

 油圧機器はどんなに複雑なものでも結局煮詰めると今説明したことの延長なのです。

第2話では実際に油圧機器はどのように動くか、ポンプ、シリンダーを使って説明します。

ご意見、ご質問、また本文中の誤記、計算間違い等ございましたらご連絡ください。

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*注1:
通常、円の面積の計算はπr2〔半径×半径×円周率〕を用いますが、油圧技術や機械工学の分野では円のサイズを‘直径’で示すことが多いため、πD2/4〔直径×直径×円周率÷4)を用いております。