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第2話 油を出す装置と油をもらう装置

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イラスト・1

 第1話ではシリンダーの面積比で小さい力から大きい力を発生させる理屈について述べましたが、面積の小さい筒にかける力が面積の大きい筒に伝わったとき、その面積の大きさに比例して大きな力が出るというものです。

 例えば10平方センチメートルの筒に10キログラムの力を加えると40平方センチメートルの筒には40kgの力が発生するというものです。

 そう、パスカルの原理。ここで、筒に仕込まれているフタ、これを押し込んだときの長さを考えてみましょう。

 仮に小さい筒の方のフタを10平方センチメートル、大きい方の筒を40平方センチメートルとします。小さい筒を4センチメートル押し込んだとしましょう。このとき小さい筒から押し出される油の量、

 つまり体積は   面積10平方センチ×押し込んだ量4センチ=40立方センチ

これだけの油が大きい筒に流れて行くわけです。

この油が大きい筒をどれくらい動かすでしょうか?流れた油が40立方センチだから

 油の量40立方センチ÷面積40平方センチ =1センチ (イラスト・1)

 

 力は4倍になるのにストロークは4分の1になってしまうわけです。結局押す力がする仕事量は同じ、と言うわけになるのです。

 ちょっと難しい表現ですが、エネルギー保存の法則が成り立っているわけですね。でも、これでは油圧機器としては使いづらい。

 そこで、こんな装置を考えてみたらどうでしょう。小さい筒をタンクとつなぎ筒の両方の穴に逆止弁(ぎゃくしべん)という水や油など流体、気体を一方向にしか進めないようにした弁を付けます。

 そうすると小さい筒のフタを上に上げればタンクからの油を吸い上げることが出来ます。今度はそれを押し込んでみましょう。タンク側は逆止弁が利いているので油が逆流することはなく、大きい筒の方に流れていきます。上下運動を繰り返せばどんどん大きい筒の方へ流れていきますね。逆止弁の仕組みは下の図(イラスト・2)を参考にしてください。

 

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イラスト・2

 

 しかし! 上下運動をしていればやがて大きい筒の中は油で一杯になってしまいます。どうしましょう?タンクに油を戻す仕組みを作らなければなりません。

 そこでストップ弁と戻り管の登場です。ストップ弁を開くとタンクと大きい筒が直結されて油をタンクに戻すことが出来ますね。これ、何かの構造に似ていると思いませんか?

 そう、ポンプです。井戸水の汲み上げや空気入れのポンプなどこれに近い構造をしています。ここで

 

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イラスト・3

大きい筒:シリンダー(アクチュエータ)

小さい筒:ポンプ

それぞれの筒やタンクをつないでいる物:ホース、又は鉄管

 とするとどうでしょう?立派な油圧機器の出来上がりですね。

 特に手動ポンプという人間の力でポンプをこぐ油圧機器などはほとんどこのシステムをとっています。

 実際の製品の例をイラスト・4に挙げておきます{手動ポンプ:P-1B・ホースH:3/8-1S・シリンダー:S1-150、いずれも理研精機(株)製}。簡単なプレス機器やジャッキであればこれで十分な効果を発揮します。

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イラスト・4

 

次回のテーマは・・・・・・、他の機械と油圧機器の性能比較でも書きます。ご期待ください。

 

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